感情は論理とどうつながっているか: 直感と勘からメタ認知へ(認知科学Ⅰ) 人間の強みを知ってAIを使いこなす.複雑な現実世界を生き抜けるようにする.

 みなさんが「自動的」に行っているコミュニケーションを解説します.しゃべったり理解したりするときに,何も考えることなく使っているルールがあって,それがどのようなものかをみなさんは自覚していません.自覚していないので,自分のコミュニケーションスタイルを自分で変えることができません.必要なことは,複数のコミュニケーションスタイルを文脈に応じて使い分け,なおかつ複数のコミュニケーションスタイルに一貫性を持たせることです

 

 人は効率的な情報処理を行うために二つの異なる自動的な情報処理を行います.一つは脳の神経細胞が行う自動性によって引き起こされます.環境に適応した結果もたらされる自動性なので,変更することができません.こちらは認知科学Ⅱで説明します.

 もう一つは,ルーチンや習慣化された行動の型がもたらす自動性によって引き起こされます.行動が自動的になると,意識的な思考や判断力が薄れます.

 

 直感的な情報処理は,論理的な思考プロセスを経ずに迅速かつ自動的に行われます.何かを見たり経験したりすることによって,直感的にその情報を評価し,それに基づいて行動を決めます.なぜ素早く行われるか?それは狩猟採取の時代に人が危険を察知し逃れるために必要であったからです.

 直感は記憶の誤帰属と関連しています.記憶の誤帰属とは,人々が特定の感情を経験したときに,それを誤って他の要因に帰属させることを指します.例えば,ある場面で感じた興奮や不快な感情を,実際には別の要因が原因であると誤って解釈することがよくあります.

 直感を引き出す手がかりは,視覚イメージや心的イメージ,イメージスキーマとして記憶に保存されています.これらは,新たなアイデアや理解を生み出すのに役立ちます.

 また,アナロジー推論や比喩的な理解は,過去の経験を使って,新しい状況や問題に対処するための直感的な洞察を得ることを可能にします.

 直感や感情は,話者の個人的な経験やバイアス,文化的背景などによって影響を受けます.人はメンタルスペース(話者世界)を作業記憶の中に作り,直感的な判断を下します.SNS世界もその一つです.

 情報そのものの信頼性や情報提供者の信頼度など,さまざま判断がメンタルスペースの情報処理と深くかかわっています.

 

 感情や直感が提供する情報を論理的に評価し,適切な判断を下すことが重要です.自分自身の認知プロセスや思考を対象化することをメタ認知と呼びます.メタ認知能力の高い人は,自分の思考プロセスを観察し,適切な戦略を選択したり修正したりすることができます.メタ認知は,直感的な判断を論理的思考に統合する上で重要な要素となります.メタ認知は,今のところ,AIにはできません.人間にしかできない,これからの人間に不可欠な能力なのです.

ChatGPT 4次人工知能ブーム

 

認知科学の歴史

直感とは? ビデオ

 

潜在記憶

記憶の誤帰属 直感を引き出す手がかり

視覚イメージ,心的イメージとイメージスキーマ

アナロジー推論と比喩的な理解

映像を使うアナロジー,映像もテキストも使う比喩

イメージスキーマ

話者世界

「現実」世界,SNS世界

誰の情報か(情報のなわばり)

自動的なコミュニケーションスタイル

自律的に脳の神経細胞が行う自動性

ルーチン(行動の型) もともとは意識的にやっていたことが注意を向ける必要がなくなった行動の型

(複数の)意識

 

メタ認知